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「六大流派」事件から原作品の著作権を尊重する必要性シリーズ3:「六大流派」事件の損害賠償額の確定について
Wed Feb 03 09:30:00 CST 2016 発表者:华诚小編

「六大流派」事件から原作品の著作権を尊重する必要性 

シリーズ3:「六大流派」事件の損害賠償額の確定について

 

 

概要:現在のところ損害賠償には、確かに一定の保守的な傾向がある。例えば、証拠依拠の原則及び立証度の基準は高過ぎるとともに厳格過ぎる傾向があり、幾つかの融通がきかない立証要件に拘泥し、蓋然性の高い証明基準を強調し過ぎる等がある。自由心証主義の運用及び自由裁量権の行使に対しても慎重で警戒し過ぎで、実際の損害確定などに柔軟性を余り重視していないところがある。

 

 前編では、裁判所が「六大流派」のモバイル端末用ゲームは著作権侵害を構成すると認定すると共に、反不正当競争法第2条に基づき、「六大流派」は市場シェアを不法に占拠し、原告に属するプレーヤーを奪い、市場経済の正常な秩序を乱し、不正競争を構成すると認定したことを検討し、本件において反不正当競争法の「信義誠実の原則」の裁判所による具体的な適用を分析した。本号では、更に「六大流派」事件での損害賠償額の算出と確定を検討してみることにする。

 本件の審理中に、係争ゲームは既に経営が停止されており、関連の宣伝も削除されていたため、侵害責任の注目点は損害賠償額に集中した。最終的に、裁判所は係争文学作品の認知度、係争ゲームの経営期間、ゲームにおける係争文学作品の関連要素の使用規模、主観的な悪意等の要素を総合的に考慮した結果、損害賠償額を50万元と確定した。

 

事件の状況 

 中国の民法は「損害額補填の原則」を規定している。即ち、損害を被る前の状態を損害賠償後の理想的状態と見なすことにある。そのため、著作権法及び反不正当競争法は、いずれもまず「被侵害者の損害額」、次に「侵害者の得た利益」、最後に「法定限度額以内」の順番で損害賠償額の算定方法を適用している。然しながら、原告が前記2つの算定方法を主張する場合、関連データ及び結果を立証しなければならない。そうしない場合、裁判所は法定限定額の範囲で損害賠償額を自由裁量により決めることになる。

 筆者は、「六大流派」事件の原告の損害額は、主に金庸氏から翻案権許諾を得るために支払った利用許諾料、及び分散したプレーヤーの利用による利益が含まれると考えている。利用許諾料の損失は原告にとって実際の損失に該当する。原告は対価を支払ったため独占的翻案権を取得していた。この独占的状態は被告の侵害行為により実質的に破壊されたため、原告が支払った独占的利用許諾料は被告が負担すべきである。

 一方、被告が侵害行為により得た利益として、ゲームの営業収入を推計することが重要となる。原告は「六大流派」のユーザー数、チャージ方針、ゲームの人気度、ゲームの中の消費レベル等の面から総合的に考慮し、被告の利益の算定式を作成し、利益額を推計した。

原告の損失に基づき推計しても、被告の得た利益に基づき推計しても、算出額はいずれも著作権法が定める法定限度額の50万元を大きく上回る。

 最終的に、裁判所は侵害行為により得た利益に対する原告の算定式を採用しないばかりか、法定賠償限定額以上も参酌することもしなかった。これは本件での遺憾なところと言わざるを得ない。

 

本件難点

 最高人民法院による民事訴訟証拠に関する若干の規定に基づき、当事者が事実の主張を証明できる証拠がない、或いは証拠が不十分である場合、立証責任を負う当事者は不利な結果を負うことになっている。

本件において、原告が提出した賠償額の主張を検討すると、被告が把握している経営記録は関連性及び確実性が高いことが明らかである。然しながら、被告の侵害行為により得た利益は法定賠償限定額の50万元を上回る場合、血流は利益に向かう人間の本性により、被告は自身に有利な判断を出し、原告の証拠による立証を否定するとともに、侵害行為に関する営業収入記録の提出を拒否する・・これが当然の結末である。また、著作権法と反不正当競争法は、商標法に定められる『帳簿、資料の提供を命じる』権利を裁判所に認めていないため、原告は『蓋然性の高い』基準に適合する賠償に関する証拠を取得することが難しいのである。

 従って、裁判所の原告の賠償に関する証拠の証拠力に対する判断には、本件「六大流派」で原告が最終的に獲得できる賠償総額が決定要因になる。この判断のために、大きな賠償額の差が出ることになる。

 

事件後の思考

本件の原告は初期段階で巨額の資金を投入している。それに対して、被告は極めて少ないコストを投入しただけで、侵害行為により高額な利益をむさぼっている。さらに、その侵害行為は市場経済における公正な分配メカニズムを破壊したのである。文化消費支出比率の増大につれて、著作権の利用許諾料も高くなっている。50万元の法定賠償限定額は、権利者の損害を補償し、侵害行為を差止る場合、ますます「対応に窮する」ようになってきている。

 孔祥俊先生は、『知的財産権保護の新思惟』で、現段階では確かに一定の保守的傾向がある。例えば、証拠依拠の原則及び立証度の基準は高過ぎるとともに厳格過ぎる傾向があり、幾つかの融通がきかない立証要件に拘泥し、蓋然性の高い証明基準を強調し過ぎる等がある。自由心証主義の運用及び自由裁量権の行使に対しても慎重で警戒し過ぎで、実際の損害確定などに柔軟性を余り重視していないところがあるなどと指摘している。

 さらに、重要な1点を思うに至った。権利行使の迅速性及びコストを考えたため、原告は「六大流派」に対する証拠収集を行った時、ゲームに作ったキャラクターの30までのゲーム内容を対象とし、その時、「襄陽戦場」、「古墓派」等権利侵害の疑いのあるゲーム内容は未だ地図しかなく、具体的な話の筋までは公開されていなかった。そのため、裁判所は、「六大流派」は『笑傲江湖』の翻案を構成し、原告の独占的翻案権を侵害したと認定したものの、『射鵰英雄伝』、『神鵰侠侶』、『倚天屠龍記』の3作品の翻案を構成していないと判定した。もし、原告が立証延期を請求した場合、被告の侵害行為に対し更に多くの証拠を取得することで、より有利な賠償結果を得ることができたかもしれないものの、迅速に権利行使を行わないと、様々な予見できないことが生じる可能性があると考えたのである。これも著作権法や反不正当競争法の趣旨と一致しない点である。

 裁判所が認定した「六大流派」での『笑傲江湖』の使用比率を見ると、本件で確定された損害賠償額が法定賠償限定額を超えていないことに一定の合理性があると考える。

 ところで、商標法及び国務院令第71号によれば、著作権侵害に関する法定賠償限定額の増額及び懲罰的損害賠償の導入の可能性を読み取ることができる。裁判所は、より低い立証基準、より柔軟な判定方法により、権利者保護を増大させ、誠実で信用があり、秩序のある市場規則を順守することで、知的財産権の尊重を市場経営主体にとって避けられない鉄則とすると、筆者は信じている。


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